病薬ひろば

HP委員ブログ

2018年11月14日
新時代を迎えた抗凝固療法の基礎を学ぼう

HP委員会


積水メディカル株式会社 国内営業部東日本営業所の須長宏行先生をお招きして、抗凝固療法についてご講演をいただきました。

 そろそろこたつが恋しい季節となりましたね。我が家でも暖房器具が活躍しはじめました。久しぶりのブログ更新です。

 先日、第37回長野県病院薬剤師会 薬剤師専門講座に参加してきました。
 今回は、積水メディカル株式会社 国内営業部東日本営業所の須長宏行先生をお招きし、「新時代を迎えた抗凝固療法の基礎を学ぼう」と題して、ご講演をいただきました。経口抗凝固薬について、最適な薬物療法を提案するために薬剤師としてどのように関わり、実践するかなどについてお話いただきました。詳しい内容・報告は、広報委員会の病薬誌や後日HP上に掲載される活動報告を見ていただきたいと思います。

 前半は、須長宏行先生に専門用語の基礎知識から始まり、抗凝固薬の比較、難解な分野として敬遠されがちな凝固検査のメカニズム、採血・採血管取扱いの基礎知識までポイントを抑え豊富なスライドとともにわかりやすく解説していただきました。
 唯一の経口抗凝固薬として長年に渡り用いられてきたワルファリンはビタミンKと拮抗することで抗凝固作用を示しますが、効きすぎてしまうと出血の危険性があります。また、ビタミンKを多く含む食材(例:納豆、青汁など)を摂取すると、ワルファリンの効果が減弱してしまうため、コントロールが非常に難しいといった問題点がありました。近年、直接トロンビンまたは第Ⅹ因子を阻害することで効果を発揮する、DOAC(直接経口抗凝固剤=Direct Oral Anti Coagulants)と呼ばれる抗凝固薬が発売されました。DOACはビタミンKとは無関係に抗凝固作用を示すため、上記のような食材の制限がありません。また、出血のリスクはワルファリンよりも低いため、比較的安全に使用できるのも利点です。その一方で、腎機能や体重による用量調節、薬効をモニタリングするツールが存在しない、一部DOACを除いて中和剤が存在しないなど、ワルファリンにはない注意点があることに留意する必要があります。
 更に今回、検査の基本である採血についても、標準採血法ガイドライン(GPA-A2)を交えて解説していただきました。私のように採血の現場にあまり携わっていない薬剤師も多い?なか、基本的なことを教えていただき、採血管及びその検査値を慎重に取り扱うべきであると締めくくられました。今回の専門講座を受講して、異常データの問い合わせ時などに適切なコンサルテーションができるよう、知識を整理しておくことの重要性を感じました。
 後半は、県内各施設からの抗凝固療法に関する事例発表がありました。そのうち、私が印象に残った事例は、術前中止薬を中止しておらず手術が延期になってしまった事例です。
 私も外科系の病棟を担当しているため、手術目的で入院した患者さんについて、持参薬鑑別を行い、術前中止薬を確認するという場面があります。その際、術前中止薬が中止されておらず、手術が一週間延期になってしまったということに出くわしたケースが過去にありました。発表を聞きながら、そのことを思い出しました。それからというもの、持参薬鑑別を行い、その内容を報告するだけで済ませないように心掛けています。例えば、主治医の指示内容や予定されている検査なども確認しながら、主治医や担当看護師などと患者さんの持参薬から得られた情報を積極的に発信し、共有するといったものです。この症例に限らずですが、事例発表を聞きながら、コミュニケーションをとることの重要性を改めて感じました。
 最後に、薬剤師専門講座を企画・運営して下さいました学術委員会の先生方、今回も大変お疲れさまでした。

 そして、今年も長野県病院薬剤師会・長野県薬剤師会病診部会 学術大会の時期がやってまいりました。いよいよ今週末、11月17日(土)・18日(日)の2日間で開催されます。新人薬剤師のみなさんにおいては、6月に引き続き新人研修会も開催されますので、奮ってご参加下さい。


JA長野厚生連 南長野医療センター
篠ノ井総合病院 薬剤部
田中 宏治

  • 新時代を迎えた抗凝固療法の基礎を学ぼう

     前半は、須長宏行先生に基礎知識から始まり、抗凝固薬の比較、難解な分野として敬遠されがちな凝固検査のメカニズムなどを豊富なスライドとともにわかりやすく解説していただきました。

  • 新時代を迎えた抗凝固療法の基礎を学ぼう

     後半は、県内各施設より抗凝固療法に関わる取り組み事例を発表していただきました。

  • 新時代を迎えた抗凝固療法の基礎を学ぼう

     抗凝固療法は患者さんへの確実な指導がより必要であり、薬剤師の適切な対応・関与が求められています。
     これはまさに薬剤師の腕の見せ所ですね!!